「ふえっ?」
 階下を覗き込む僕の様子に気付いたホタルが、背後から疑問府を投げかけてくる。

「お兄ちゃん、何か探し物?」
「ああ、大切なものを落としちゃったんだ」
「へえ、お兄ちゃんも?」
 お兄ちゃん「も」って、ホタルはぬいぐるみの猫のことをわかっているのだろうか?

「ホタルもね、何か大切なものを無くしちゃったような気がするの」
 むむむ、このセリフって、どこかで聞いたことがあるぞ。
 いったいどこだろう……?

『ホタルの大切な、なにかなの……』
 
 僕は記憶を振り返り、ホタルとの出会いを思い出す。
 そうだ、交番でホタルに会った時だ。

「でもね、ホタルは大丈夫。だって、こうやってお兄ちゃんがおんぶしてくれてるんだもん」
 交番で泣きじゃくっていた女の子とは違うホタルが、ここに居た。

 そうか、あの時もホタルは、ぬいぐるみじゃなくてぬくもりを探していたんだ。
 交番の時だって、誰かがホタルの手を取ってあげなくてはいけなかったんだよ。

「お兄ちゃんってあったかい……」
 全幅の信頼を僕の背中にゆだねるホタル。
 その心地よさに、このままホタルと一緒にいるのもいいんじゃないかと、僕は考えを巡らせ始めた。

 ぬいぐるみの猫は、僕がもらってしまえばいい。
 そうすれば、ホタルはしばらくホタルのままだ。
 ケイの記憶がぬいぐるみの猫以外のものに移るまでは、ホタルは確実に僕を慕ってくれるだろう。

 >つづく