「お兄ちゃん……」
 そんな風に、僕を慕ってくれる女の子。
 その手を簡単に離せるわけがない。

「わかったよ、ホタル。手は絶対に離さないから」
「ホントにホント? ぜったいだよ、お兄ちゃん」
「ああ、約束するよ」
 僕はホタルの顔を見ながら、握る手に軽く力を込める。
「うん」
 安堵の目で見つめ返してくるホタル。胸の奥がかっと熱くなる。

 ――もうこの手は離さないから。

 ホタルが納得したのを心で感じると、キャスケットと伊達眼鏡を拾って自分のバッグに入れた。そして二人で非常階段に出る。
「やっぱり、ホタル恐い」
「大丈夫だよ、この手は離さないから」
「でも寒い。お兄ちゃんの背中で、あったかあったかしてほしい」

 それって……、おんぶしてほしいってこと?

 ホタルはケイと違って、とことん甘えんぼだった。
「仕方ないなあ……」
 僕はホタルをおんぶする。
「ありがとう、お兄ちゃん」
 ホタルはぎゅっと僕の背中にしがみ付いてきた。

 えっ、えっ、なんか柔らかいものが背中に押し付けられちゃってるんですけど……。

 背中に当てられた感触に、僕の頭は真っ白になりそうになる。
 恥ずかしくなった僕は、ぬいるぐみの猫を探すように視線を階下にさまよわせた。

 >つづく