「今週はね、大切な出会いがあったの」

 なんだ、やっぱりそうか……。
 ケイの秘密を知って彼女に興味が湧きつつあった僕は、ちょっぴり残念に思ってしまう。

「それはね、この猫のぬいぐるみに記憶が移った直後だった」
 ケイはゆっくりと、その出会いについて話し始めた。
「私ね、登校中にぬいぐるみを落としちゃったの。はっと気がついた時は交番に居た。なんか私、泣きじゃくっていたみたい……」
 えっ、それって……。
「お巡りさんの話だと、ぬいぐるみを届けてくれた人がいたらしい。同じ針葉高校の生徒で、すごい好青年だって話」

 も、も、も、も、もしかして、そ、その好青年って、ぼ、僕のこと?

 僕は得体のしれない運命を感じていた。
 一週間前に交番で会ったホタル。
 そして一緒にエレベーターに閉じ込められた目の前のケイ。
 やっぱり二人は同一人物だったんだ。

「私、その人にお礼を言いたくて。だから名前をメモしたんだけど……」
 そう言いながらメモを取り出すケイ。
 えっ、アレをメモってきたの?
 僕は、額に冷や汗が流れるのを感じる。

「あった、あった。開君、この人知ってる? 綾小路桃太郎さん」

 いや、それって偽名だから。
 もし落とし主が見つからなかった時、ぬいぐるみが僕のところに送られると困るだろ。だから、つい書いてしまった偽名。
 素直に本名を書いておけば良かったと、僕は後悔する。

「どんな人なんだろう、綾小路桃太郎さん……」
 急に乙女顔になるケイ。
 おいおい、そんなに急変するなよ。
 というか、そんな奴ウチの高校にいるかよ。名前見たらすぐに分かるだろ、偽名だって。

 それに――僕は彼の正体を知ってるんだけど。

「ケイ、実は……」
 僕は、綾小路桃太郎の正体を明かそうとした。


 >つづく