「なによ」
 一通り叫ぶと、女の子は捨て台詞を残して静かになった。
 手には、白い猫のぬいぐるみを握りしめたまま。

 でも、あれって……。
 そのぬいぐるみに見覚えがあった。
 猫が、すましたように尻尾を立てて座っている恰好。よく見かける姿のぬいぐるみだったが、その額に付けられた紋様が独特だったからだ。

 ――赤い渦巻紋様。

 純白の猫に赤の紋様はかなり目立つ。
 その紋様が目に入らなければ、見覚えがあることに気つかなかっただろう。

 それは一週間前のこと。
 通学路の途中の歩道で、僕は一匹の猫のぬいぐるみを拾った。
 純白の額に浮かぶ赤の渦巻紋様がものすごく特徴的なぬいぐるみを。

 そのまま捨ててしまっても良かったが、ちょうど目の前に交番があったので僕はぬいぐるみを届けに行ったのだ。
 交番に入ると、中では一人の女の子が机に顔を伏せて泣きじゃくっていた。
 僕は恐る恐る、女の子の対応をしているお巡りさんに声をかけた。

「あのう、今そこで、これを拾ったんですけど……」
 僕はぬいぐるみを頭の上に掲げる。
 すると、女の子の応対をしているお巡りさんが顔を上げてこちらを向いた。

「ああ、落し物ね。ごめんね、今ちょっと取り込んでいるから。申し訳ないけどそこにあるメモに君の名前と連絡先を書いて、置いておいてくれないかな。後で拾得物の登録をしておくから」
 僕は、カウンターの上に猫のぬいぐるみを置く。そして、メモに書き込むためにボールペンを手に取った。
 お巡りさんは目の前の女の子にいろいろと質問をしているようだった。


 >つづく