「コラッ!」
 女の子は、マイクに向かってすごい剣幕で叫び始める。
「無事じゃないわよ、早く降ろしなさいよ」

 いや無事だろ? とりあえずは。
 早く降ろしてほしいのは賛同するけど。

 女の子の言葉を聞きながら、つい突っ込みを入れたくなる。
「メンテナンス室、なに黙ってんの? 点検より先にやることがあるでしょ! 私病気なんだから。ちょっと、聞こえてんの!? 何か言ったらどうなのよっ!」

 つんと突き出した女の子のお尻。
 叫び声と一緒に、フレアスカートがひらひらと揺れている。
 その様子はなかなか魅力的で、ついつい目を奪われてしまう。そのうち僕は、女の子の恰好が見事なモノクロであることに気がついた。
 エレベーターに乗った時は全然気にしていなかったが、彼女の服装はちょっと不思議だった。

 上から黒のキャスケット、黒縁メガネ、黒のコート、黒のフレアスカート、黒のタイツ、黒のブーツ……。

 つまり上から下まで見事に黒ずくめ。真っ黒カラスのような女の子が、スカートを揺らしながら怒りに身を任せている。
 そしてそんな彼女が手にしていたものに、さらに違和感を覚える。
 彼女のコーディネイトにまったく似合わないそれは――純白の猫のぬいぐるみだった。


 >つづく