「えっ!?」
ケイが驚きの声を上げる。
「あのタワーって、なんで光ってんの? あれって来年の春のオープンじゃなかったっけ?」
日本一、いや世界一高いタワー。
来年の春のオープンの予定だが、タワー自体の工事はほぼ完成している。
今晩はオープン前の特別イベントとして、LED電球がその巨大なタワーを照らしていた。
「綺麗……」
濡れた大きな瞳に、イルミネーションが反射する。
その瞳は、僕と手を繋いでいた時のホタルと全く同じだった。
「本当に綺麗……だ」
こんなにドキドキするのはなぜだろう?
隣に居るのがホタルだったら、こんな気持ちにはならなかったような気がする。
僕はケイと一緒に、小城山の展望台でしばらくの間、街の夜景を眺めていた。
「ホタルはね、私の一番嫌いなタイプの女なの」
展望台を離れると、駅に向かう道でケイは身の上を話し始める。
「泣き虫で、男に媚びて、遠慮というものを知らない……」
記憶が無いんだから、それは仕方が無いことなんじゃないのだろうか?
「だから、私はホタルと呼ばれるのが一番嫌い」
人の腹部を蹴るほどにね。
「でもね、ホタルは私の深層心理じゃないかって、病院の先生が言うの。私は本当はそうなりたいと願っているって……」
――ホタルはケイの深層心理。
この説明は、僕の心にすっと沁み込んでいく。
ケイは攻撃的でガードが固い。
それは、とてもやわらかい中身を守るための非常手段だったんだ。
無防備なホタルと攻撃的なケイ。
二人の距離を縮めることは、できないものだろうか?
「ねえ、開君」
ケイが僕の顔をのぞきこむ。
「なんで、私がこんな病気になっちゃったのか、知りたい?」
僕は少し考えた後、小さく返事した。
「うん」
ケイのことが知りたい。一緒にいろんな話しをしてみたい。
そんな気持ちが広がっていく。
「それはね……」
ケイは一呼吸置いたあと、ゆっくりと話し始めた。
>つづく
ケイが驚きの声を上げる。
「あのタワーって、なんで光ってんの? あれって来年の春のオープンじゃなかったっけ?」
日本一、いや世界一高いタワー。
来年の春のオープンの予定だが、タワー自体の工事はほぼ完成している。
今晩はオープン前の特別イベントとして、LED電球がその巨大なタワーを照らしていた。
「綺麗……」
濡れた大きな瞳に、イルミネーションが反射する。
その瞳は、僕と手を繋いでいた時のホタルと全く同じだった。
「本当に綺麗……だ」
こんなにドキドキするのはなぜだろう?
隣に居るのがホタルだったら、こんな気持ちにはならなかったような気がする。
僕はケイと一緒に、小城山の展望台でしばらくの間、街の夜景を眺めていた。
「ホタルはね、私の一番嫌いなタイプの女なの」
展望台を離れると、駅に向かう道でケイは身の上を話し始める。
「泣き虫で、男に媚びて、遠慮というものを知らない……」
記憶が無いんだから、それは仕方が無いことなんじゃないのだろうか?
「だから、私はホタルと呼ばれるのが一番嫌い」
人の腹部を蹴るほどにね。
「でもね、ホタルは私の深層心理じゃないかって、病院の先生が言うの。私は本当はそうなりたいと願っているって……」
――ホタルはケイの深層心理。
この説明は、僕の心にすっと沁み込んでいく。
ケイは攻撃的でガードが固い。
それは、とてもやわらかい中身を守るための非常手段だったんだ。
無防備なホタルと攻撃的なケイ。
二人の距離を縮めることは、できないものだろうか?
「ねえ、開君」
ケイが僕の顔をのぞきこむ。
「なんで、私がこんな病気になっちゃったのか、知りたい?」
僕は少し考えた後、小さく返事した。
「うん」
ケイのことが知りたい。一緒にいろんな話しをしてみたい。
そんな気持ちが広がっていく。
「それはね……」
ケイは一呼吸置いたあと、ゆっくりと話し始めた。
>つづく