「どこだ!?」
僕は、ぬいぐるみの猫を探す。
しかし、見える範囲にはどこにも無かった。
「ホタル、どこで落としちゃったんだよ?」
「わからない、わからないの……」
ホタルは泣いてばかりで埒が明かない。
――自分で探すしかないか……。
僕は、生垣の中やベンチの下など、駅前広場をくまなく探す。
が、ぬいぐるみの猫は見つからなかった。
――どうしよう、今週のケイの記憶が失われてしまう。
僕の頭の中は、真っ白になった。
「ホタル、何かを無くしちゃった。大切な、大切な、何かを……」
何を無くしたのかも分からないまま、泣き続けるホタル。
「ごめん、ホタル。僕も、君の記憶が見つからないんだ……」
僕の心が喪失感に占領されていく。
駅前交番の赤色灯が、ぼんやりと僕の視界に入って来た。
しょうがない、あそこの交番に行って、お巡りさんを呼ぶしかない。
でも、それって……。
この間、通学途中にぬいぐるみの猫を拾った時と同じじゃないか。
ホタルにはぬくもりが必要なんだと、さっき僕は気付いたんじゃなかったのかよ。
『ありがとう、ホタルのこと大切にしてくれて』
自問する僕の脳裏に、ケイの声がよみがえる。
ダメだ、諦めちゃ。
ダメだ、ホタルを見捨ちゃ。
今、僕が諦めたら、ケイの言葉を裏切ることになる。
それに、彼女と手を繋いだ思い出だって無くなっちゃうじゃないか。
もう一度、よく考えるんだ。最初から。
僕は目をつむって、ケイがホタルに変わるまでのいきさつを思い出した。
>つづく
僕は、ぬいぐるみの猫を探す。
しかし、見える範囲にはどこにも無かった。
「ホタル、どこで落としちゃったんだよ?」
「わからない、わからないの……」
ホタルは泣いてばかりで埒が明かない。
――自分で探すしかないか……。
僕は、生垣の中やベンチの下など、駅前広場をくまなく探す。
が、ぬいぐるみの猫は見つからなかった。
――どうしよう、今週のケイの記憶が失われてしまう。
僕の頭の中は、真っ白になった。
「ホタル、何かを無くしちゃった。大切な、大切な、何かを……」
何を無くしたのかも分からないまま、泣き続けるホタル。
「ごめん、ホタル。僕も、君の記憶が見つからないんだ……」
僕の心が喪失感に占領されていく。
駅前交番の赤色灯が、ぼんやりと僕の視界に入って来た。
しょうがない、あそこの交番に行って、お巡りさんを呼ぶしかない。
でも、それって……。
この間、通学途中にぬいぐるみの猫を拾った時と同じじゃないか。
ホタルにはぬくもりが必要なんだと、さっき僕は気付いたんじゃなかったのかよ。
『ありがとう、ホタルのこと大切にしてくれて』
自問する僕の脳裏に、ケイの声がよみがえる。
ダメだ、諦めちゃ。
ダメだ、ホタルを見捨ちゃ。
今、僕が諦めたら、ケイの言葉を裏切ることになる。
それに、彼女と手を繋いだ思い出だって無くなっちゃうじゃないか。
もう一度、よく考えるんだ。最初から。
僕は目をつむって、ケイがホタルに変わるまでのいきさつを思い出した。
>つづく